大血管疾患 による 高血圧

大血管疾患 による 高血圧

大血管とは、心臓の血管や脳の血管、足の血管のことをいいます。血液は心臓から出て体を循環し、また心臓へ戻ってきます。この間、血液が逆流しないよう、血管のあちこちに「弁」がついています。

動脈血が心臓に逆流する 大動脈弁閉鎖不全症

大血管疾患 による 高血圧

大血管疾患 による 高血圧

心臓から全身に向けて送り出される動脈血は、左心室から大動脈へ流れ出ていきますが、左心室と大動脈の間にも「大動脈弁」というふたがついています。

心臓の収縮によって動脈血が送り出されるときには大動脈弁は開き、心臓が拡張するときには閉じて、血液が心臓に逆流するのを防いでいるのです。

ところが、この大動脈弁が十分に閉舗しなくなると、いったん心臓から出ていった血液が、心臓の拡張するときにまた戻ってきてしまいます。これが大動脈弁閉鎖不全症です。

血液が逆流するようになると、心臓は体のすみずみまて血液を行き渡らせようとして、いままで以上の血液を送り出さなければならなくなります。そのため、血圧が高くなります。

この状態が長くつづくと、左心室の拡大や肥大が起こり、やがては左心室不全に陥ります。

原因としてはリウマチ性の心内膜炎が多く、梅毒や大動脈炎症候群から起こることもあります。心内膜とは、心臓の内壁をおおう膜のことです。聴診器を当てると雑音が聴こえるので、聴診でこの病気が疑われたら、超音波検査をします。

炎症のあるときには、抗生物質などで炎症の治療をし、心不全があるときには強心薬や利尿薬を使います。重症の場合は、人工弁置換術(悪くなった心臓弁を人工的につくった弁でおきかえる手術)を行うこともあります。

腕の血圧が高く、足の血圧が低くなる 大動脈縮窄症

生まれつき大動脈に狭窄のある病気で、ほとんどの場合、子どものころにわかります。

血圧は、狭窄のあるところまでは高く、そこから先は低くなります。そのため、上腕と下肢で血圧を測ると、上腕は高く、下肢は低くなり、足の動脈では脈がふれにくくなります。狭窄のあるところから先へは血液が流れにくくなるので、末端の血行が悪くなり、足の発育不良が起こることもあります。

年齢が進むにつれて、上腕の血圧が高くなるので、脳出血、心不全などを起こすこともあります。血管の狭窄部分に聴診器を当てると雑音が聴こえます。血管造影検査をしたうえで診断されますが、胸部X線撮影、心電図などの検査を定期的に行う必要があります。治療は手術が中心で、狭窄しているところを切除したり、人工血管を使ったりします。

弁膜症の投薬以外の治療について

内分泌性高血圧

大血管疾患 による 高血圧

分泌性高血圧 には、 先端巨大症 、 クッシング症候群 、 原発性アルドステロン症 、 褐色細胞腫 、 レニン産生腫瘍 などがあります。

内分泌性高血圧 副腎皮質ホルモンの分泌異常で起こる 原発性アルドステロン症

内分泌性高血圧

内分泌性高血圧

副腎から分泌されるホルモンの異常で起こる病気が 高血圧 の原因になることもあります。

副腎皮質から分泌される アルドステロン は、腎臓の尿細管でナトリウムを再吸収し、カリウムを排泄させる働きをしています。

ところが、副腎皮質に副腎腺腫という良質の腫瘍やガンができたり、過形成といって副腎皮質が増殖すると、 アルドステロン が必要以上に分泌されます。これが 原発性アルドステロン症 で、低カリウム血症を示すことが多く、ナトリウムをため込む傾向になるため、体内の水分量がふえ、循環血液量もふえて高血圧になります。

レニンの分泌量が少なくなるのも特徴の1つです。副腎皮質に腺腫や過形成があるかどうかは、 CT検査 、 シンチグラフィー 、 超音波検査 などの画像診断をするとわかります。

シンチグラフィー は、アイソトープを静脈に入れたあとで、特殊なカメラで写真を撮る検査です。

副腎静脈へカテーテルを入れて血液をとり、血中の アルドステロン の量を測定することもあります。腺腫があれば、手術でとり除き、過形成の場合は抗アルドステロン薬を使います。

副腎皮質からのホルモン分泌過剰で起こる クツシンク症候群

副腎皮質から分泌される糖質コルナコイドというホルモンの過剰によって起こる病気が クッシング症候群 です。

糖質コルナコイドが過剰に分泌されるのは、副腎皮質ホルモンの分泌を促す ACTH ( 副腎皮質刺激ホルモン ) がたくさん分泌された結果できる皮質の過形成や、腺腫、ガンなどが原因です。

この病気になると、疲れやすくなり、肥満して、顔などは満月のよう ( ムーンフェイス ) にまるくなりますが、手足は筋肉が萎縮して細くなります。

血圧も高くなりますが、これは糖質コルナコイドにナトリウムをため込む作用があるためと、アンジオテンシンなどの昇圧物質が増加するためだろうと考えられています。

尿の中にある糖質コルナコイドの代謝物を調べたり、副腎静脈造影、血管造影などの検査をし、手術が可能な場合は手術によって腺腫やガンなどを切除します。

しかし、手術ができない場合は ACTH 分泌を抑制する作用のある薬や、糖質コルチコイドの分泌を抑制する薬、降圧薬を投与します。

降圧薬は、手術をしても血圧が下がらない場合にも必要です。降圧薬では、 カルシウム括抗薬 、 ACE ( アンジオテンシン変換酵素 ) 阻害薬などが使われます。

副腎髄質にできる腫瘍 褐色細胞腫

副腎髄質からは アドレナリン や ノルアドレナリン などの カテコールアミン が分泌されています。ここに腫瘍ができると、 カテコールアミン が過剰に分泌され、 動悸 、 冷や汗 、 高血圧 などが起こります。

これらの症状が持続して起こるタイプと、発作的に起こるタイプがあり、いずれも20 〜40オぐらいに多い病気です。

ときには交感神経系の組織にできた腫瘍のために起こることもあります。診断は、症状のほか、尿中の カテコールアミン や発作時の血中の カテコールアミン の測定 、 CT検査 、 超音波検査 、 血管造影 などを行ったうえで下します。手術をして腫瘍をとり除けば完治しますが、降圧薬の中の α遮断薬 と β遮断薬 を組み合わせて血圧をコントロールすることもあります。

腎血管性高血圧

腎血管性高血圧

腎血管性高血圧 は、大動脈から腎臓へとつながる腎動脈またはその分枝が部分的あるいは完全に閉塞した結果、レニン・アンジオテンシン系が冗進して引き起こされる高血圧です。

腎血管性高血圧 腎臓に血液を送る動脈が狭められるために起こる

腎血管性高血圧

腎血管性高血圧

腎血管性高血圧 は、腎臓に血液を送っている動脈に、狭窄といって、内腔の狭められるところができ、腎臓に血液が十分行かなくなるために起こる 高血圧 です。二次性高血圧の中では、 腎性高血圧 の次に多く起こります。

腎動脈に狭窄ができる主な原因は、動脈硬化症と線推筋性異形成ですが、そのそほかにも大動脈炎症候群、血栓症、塞給症などがあります。

特に老齢者の場合は、動脈硬化による狭窄が多くなっています。ただ、わが国では、欧米と異なり、大動脈炎症候群によるものが多いという特徴があります。

線維筋性異形成 とは、血管壁に膠原線維という細胞と細胞のつなぎ目になっでいる組織と、筋線維が増殖するために、血管の内腔が狭くなる病気です。

線維筋性異形成は 腎動脈 に起こりやすく、そのために 腎血管性高血圧 になるのです。若い女性に多い病気です。

動脈炎症候群とは、大動脈の分岐部から始まる動脈の炎症で、圧倒的に女性に多く起こります。炎症のある側の脈がふれなくなったり、ふれにくくなるので、脈なし病(別名:高安病)とも呼ばれています。

立ちくらみ、目の充血、視力低下、手足の冷えやしびれなどを伴うこともあります。炎症が腎動脈に及ぶと、 腎血管性高血圧 の原因になります。

なぜ 血圧が 上がるのかという点については、腎動脈に狭窄が起こり、腎臓への血流量が少なくなると、レニンの分泌がふえるからだと考えられています。

血管を拡張させる方法で治ることが多い

腹部に聴診器を当てると、狭くなった動脈内腔を通過する血流により生じる雑音が聴こえ、 静脈性腎孟造影 を行うと、造影剤を入れて2〜3分までは狭窄のある側の腎臓の影が狭窄のない側にくらべて映りにくく、また腎臓の大きさが小さいことなどにより診断されます。

レニンの測定と腎動脈造影も欠かせない検査です。特に腎動脈造影は、狭窄のある部分を特定できるので重要です。

治療でまず行われるのは、「経皮経管的血管形成術(PTA)」です。これは、先端にバルーンのついたカテーテルを股動脈や前腕動脈から入れて、狭窄のあるところでふくらませ、血管を拡張させる方法です。これは入院期間も短く、費用も少なくてすみます。腎動脈の狭窄が治ると、レニンの分泌も正常になり、血圧も下がります。

この方法で成功しなかったときは、血行再建術などの手術を行い、それでもだめな場合は降圧薬を用います。降圧薬では、ACE ( アンジオテンシン変換酵素 ) 阻害薬が有効なことが多く、これを単独で用いたり、 利尿薬 と併用します。この薬はアンジオテンシンⅠをアンジオテンシンⅡ にかえる酵素の働きを抑える薬です。