そのほかの動脈の病気 高血圧が原因の合併症

そのほかの動脈の病気 高血圧が原因の合併症

そのほかの動脈の病気 高血圧が原因の合併症 の代表的な 大動脈瘤 は、大動脈(通常は20~25 ㎜ 程度)が「こぶ」のように病的にふくらんだ状態(30~40 ㎜ 以上)を指します。この「こぶ」ができた場所によって○○大動脈瘤と呼ばれ、胸部に動脈瘤がある場合を胸部大動脈瘤、腹部に 大動脈瘤 がある場合を腹部大動脈瘤といいます。

破裂すると命取りになる 「 大動脈癌 」

 そのほかの動脈の病気 高血圧が原因の合併症

そのほかの動脈の病気 高血圧が原因の合併症

 

大動脈壁が弱くなり、血圧に耐えられずに外側に向かってふくらんでしまった状態で、ほとんどは動脈硬化がベースにりゆうなって起こります。胸の 大動脈癌 は健康診断などの胸部Ⅹ線写真で偶然に発見されたり、腹部の 大動脈癌 は患者自身がそのはれに気づくことがあります。

また、 動脈瘤 の壁にひびが入るときに肩、背中、腹部などに強い痛みがあり、それが発見のきっかけになることもあります。

大動脈痛 が破裂する前に見つかれば、手術によって、人工血管とおきかえたり、人工のつぎ当て(パッチ)を当てたりして破裂を防ぐことができます。パッチを破裂直後に当てて、出血を抑えることもあります。しかし、破裂してしまうと、体内で大出血を起こしてショック状態になり、救命がむずかしくなります。

 そのほかの動脈の病気 高血圧が原因の合併症 大動脈の膜が二層に裂ける「 解離性大動脈瘤 」

動脈壁は内膜、中膜、外膜からなり、中膜はさらに何層にも分かれています。この中膜が弱くなり、そこに血液が浸入して二層に分かれ、裂けてしまうことがあります。

これが 解離性大動脈瘤 で、中高年に多いものの、若い人にも起こります。生まれつき中膜が弱かったり、動脈硬化のせいで起こると考えられていますが、高血圧は原因にも引きがねにもなると考えられています。

突然、激痛が起こりますが、解離の場所により、胸、背中、腰、腹部など、痛むところが違ってきます。CT 検査、超音波検査、大動脈造影などの検査を行い、生命が危ぶまれる場合は緊急に、危険が迫っていない場合は経過を観察したうえで、人工血管におきかえたり、パッチを当てるなどの手術を行います。しかし、脳、心臓、腎臓などの臓器へ向かう動脈に解離が及ぶと、致命的になります。

循環障害のために足が痛む 「 四肢動脈閉塞症 」

手足の主要動脈が動脈硬化などのために閉塞し(ふさがれて)、末梢に循環障害が起こる病気で、主に膝から下に起こります。

足の痛み、冷感、間欠性披行(休み休みでないと足が痛んで歩けなくなる)などのほか、循環障害のある皮膚が紫色になったり、カイヨウになったりすることもあります。

この病気と判明したら、閉塞のあるところを人工血管でおきかえたり、バイパス手術をしたり、血小板凝集抑制薬やプロスタグランディンなどの血管拡張薬をえ使って治療します。血流が悪いために壊し死(体の組織や細胞が部分的に死ぬこと)に陥ったようなときは、切断しなければならないこともあります。

腎臓の病気 高血圧が原因の合併症

腎臓の病気 高血圧が原因の合併症

腎臓の病気 高血圧が原因の合併症 高血圧が続くと、腎臓の血管でも動脈硬化が起きます。 腎臓の血管は特に細いので、動脈硬化が起こると血液の通り道がさらに狭くなり、血液の流れる量が減ってしまいます。

血液が十分に行き渡らなくなると、腎臓の働きが悪くなってしまいます。

動脈硬化のせいで 腎機能障害が起こる  「 腎硬化症 」

 腎臓の病気 高血圧が原因の合併症

腎臓の病気 高血圧が原因の合併症

高血圧 が引き起こす腎障害で最も多いのは 腎硬化症 です。 腎硬化症 とは、腎臓の小動脈が動脈硬化を起こして糸球体と尿細管の機能が悪〈なる病気で、高血圧が長くつづ〈と起こります。

腎硬化症 はゆっくり進行するので、最初は尿検査をしても異常がないか、あっても軽い血尿やタンパク尿程度です。しかし、だんだん腎機能が低下し(腎不全)、老廃物が体にたまって、だるさ、食欲不振などが起きます。腎不全が進むと、最終的には尿毒症になります。腎不全が進むと体に水分がたまるため、主に膝から下にむくみが起こり、血圧がさらに高くなって急性心不全も合併しやすくなります。

また、腎臓は赤血球の生成を促進するエリスロポエチンというホルモンをつくりますが、腎不全ではこのホルモンの生成も落ちるので、赤血球ができにくくなり、貧血も起こります。

カルシウム代謝にも異常が起きて、骨がもろくなることもあります。食事療法、運動療法に加え、必要ならループ利尿薬(フロセミド)、カルシウム桔抗薬、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬(カプトプリル、エナラプリル)、β遮断薬などの飲み薬で血圧を調整し、病気の進行を抑えることが重要です。

血圧が異常に高くなり、さまざまな障害を起こす 「 悪性高血圧 」

血圧が非常に高くなり、腎障害の程度が強いほか、脳や心臓の合併症が急速に進行する状態です。

最低血圧が 130 mmHG 以上になります。腎機能が急激に悪化することが多く、眼底変化も強く、高血圧性脳症も起こります。

高血圧性脳症とは、脳の動脈の異常な拡張によって脳庄が高くなり、嘔吐を伴ったはげしい頭痛、口のもつれ、運動マヒ、視力障害などが起こる状態で、ひどいときは全身のケイレンも伴います。

悪性高血圧の原因の多くは 本態性高血圧 と 慢性腎炎 ですが、腎血管性高血圧、褐色細胞腫、強皮症(膠原痛の1つで、腎臓の血管をはじめ、全身の血管がおかされる病気)などが原因になることもあります。

悪性高血圧の人の一部はすでに末期腎不全(尿毒症)を起こしているため、人工透析が必要になります。高血圧性脳症や心不全がある場合は、ICU(集中治療室)などで厳重な管理のもとに、静脈注射を中心にして血圧を下げます。脳症や心不全がなく、腎障害が軽いときは、一般病室で飲み薬(主にACE 阻害薬、ループ利尿薬、β速断薬、カルシ拮抗薬)などが使われます。

 

心臓の病気 高血圧が原因の合併症

心臓の病気

心臓の病気 ( 心疾患 ) は、悪性新生物 ( がん ) 、脳血管疾患 ( 脳卒中 ) と並ぶ日本人の三大死因のひとつです。

平成27年の全ての死亡者のうち、心疾患(高血圧症を除く)が原因で死亡した人の割合は15.2%で、日本人の6~7人に1人は心臓病で亡くなっていることになります。

心臓の病気 高血圧が原因の合併症

心臓の病気 高血圧が原因の合併症

日本人の死因第 2 位を占める 心臓の病気

欧米では、以前から 心臓病 による死亡がたいへん多かったのですが、日本では多くありませんでした。

しかし最近では、食生活の欧米化に伴って日本人にも 心臓病 がふえ、1985年からついに死因の第 2 位を占めるようになりました。心臓病の中でも最も多いのが狭心症と心筋棟塞です。高血圧が原因で起こる心肥大も、これらと並んで心不全の原因となることがあります。

心臓の壁が厚くなり心 不全 になりやすい 「 心肥大 」

高血圧が長くつづくと、心臓に負担がかかってくるため、一種の防御反応として心臓の筋肉の壁が厚くなります。これが 心肥大 です。特に血液を全身に送り出している左心室が肥大しやすく、これを 左室肥大 といいます。

肥大した心筋は長い間にくたびれて弱くなり、心臓のポンプ機能が果たせなくなります。これが心不全で、十分に血液を送り出せなくなるために心臓に血液がたまり、ひどくなると、 肺水腫 といって肺のほうまで血液があふれ出ることになります。血圧の上昇が著しい場合、心不全は短期間で起きることもあります。

心不全 になると、初めのうちは動悸や息切れが起こる程度ですが、だんだん呼きぎ吸困難が強くなり、 起坐呼吸 といって寝ているときに苦しくてすわっていないと呼吸ができなくなったり、夜間呼吸困難に陥ります。 肺水腫 になると、血疾や水泡が出てきて、呼吸不全で死亡することもあります。

このような人の多くは 心筋梗塞 を合併しています。 心肥大 があるかどうかは、心電図で調べますが、正確に診断するには超音波検査で心筋の厚さを測る必要があります。

心肥大 では原因を突き止めることが大事ですが、高血圧が長くつづいているために起こった 心肥大 だと診断されたときは、 β遮断薬 ACE ( アンジオテンシン変換酵素 )  阻害薬などの 降圧薬 を用います。

胸が締めつけられるような痛みに襲われる 「 狭心症 」

心臓を養う冠動脈の内壁が、 動脈硬化 や筋肉の異常な収縮によって狭められると、心臓へ行く血液が足りなくなります。そのために起こる病気を 虚血性心疾患 といい、 狭心症 と 心筋梗塞 があります。

狭心症 は血流のとだえが部分的かつ一時的に起こった状態で、 心筋梗塞 は完全にとだえた状態です。 狭心症 には、発作が運動したときや興奪したときに起こる 労作狭心症 と、安静にしているときに起こる 安静狭心症 がありますが、たちの悪いのは 安静狭心症です。

これは、 心筋梗塞 の前段階なので、安静時に発作に襲われることがあったら、医師の厳重な管理が必要です。 狭心症 の発作は胸が締めつけられたり圧迫されたりするような痛みがほとんどですが、胸がやけるように熱くなったり、もやもやすると感じる人もいます。

痛む場所は胸全体のほか、左胸に限られることも多く、右胸だけ、あるいは左右から胸が圧迫されることもあります。発作の強い場合は、胸から左肩、左腕へと放散する痛みがあり、ときには右側への放散痛や両側への放散痛が起こることもあります。

発作のつづく時間はふつう数分ですが、 安静狭心症 だと10分以上つづくこともあります。 高血圧 は 動脈硬化 を侃進させるだけでなく、心臓への負担を増し、 狭心症 の危険因子の 1 つとなります。

そのほか、 肥満 高脂血症 糖尿病 喫煙 ストレス も、 狭心症 の危険因子です。 狭心症 かどうかは、本人の自覚症状と心電図、冠動脈造影などによって診断されます。

心電図は、大半の人が発作のないときは正常で、発作のあるときだけT波が陰転したり(盛り上がった波になるはずのものが逆の形の波になる)、 ST が下降します

したがって、一定の運動をさせてから心電図をとる運動負荷心電図が必要です。

発作が起きたら、すぐ ニトログリセリン か、亜硝酸薬のISDN( イソソルビド・ダイナイトレイト )を舌下に入れてとかすとおさまります。

しかし、狭心症は発作の予防が大事なので、カルシウム桔抗薬(ジルチアゼム、ニフェジピンなど) β遮断薬( プロプラノロール ピンドロール など )、亜硝酸薬などの薬が使われます。

亜硝酸薬は発作の応急処置だけでなく、予防にも大量投与され、胸にはるテープ状の薬(はり薬)も使われます。薬だけでコントロールできないときは、経皮経管的冠動脈形成手術(狭窄部位をカテーテルの先につけたバルーンでふくらませる)や冠動脈のバイパス手術を行うこともあります。、また、日常生活では危険因子を避けることが大事です。

心筋の組織が死んでしまう 「 心筋梗塞 」

心筋への血流がとだえた状態が長時間つづくと、心筋の組織が死んでしまいます。これが 心筋梗塞 で、発作の胸痛もはげしく、呼吸困難も起こり、症状が30分以上つづきます。

ニトログリセリン や ISDN も効果がなく、至急、病院、とりわけ CCU や ICU( 集中治蓉室 ) のある病院へ運ぶことが必要です。

血清生化学検査をすると、 CPK ( クレアチニン・フォスフォキナーゼ )や GOT などの値が高く、心電図も ST の上昇や異常なQ波が出るなど、変化します。

心不全 や 不整脈 を合併すると死に結びつくこともありますが、 CCU の普及で生命をとりとめることが多くなりました。発作後1週間たっても合併症のない場合はリハビリテーションを開始しますが、1年以内に再発しやすいので、β遮断薬や血小板凝集抑制案などの薬を用いるとともに、 狭心症 のとき以上に危険因子を避ける生活をすることが大事です。