高血圧の知識

内分泌性高血圧

大血管疾患 による 高血圧

分泌性高血圧 には、 先端巨大症 、 クッシング症候群 、 原発性アルドステロン症 、 褐色細胞腫 、 レニン産生腫瘍 などがあります。

内分泌性高血圧 副腎皮質ホルモンの分泌異常で起こる 原発性アルドステロン症

内分泌性高血圧

内分泌性高血圧

副腎から分泌されるホルモンの異常で起こる病気が 高血圧 の原因になることもあります。

副腎皮質から分泌される アルドステロン は、腎臓の尿細管でナトリウムを再吸収し、カリウムを排泄させる働きをしています。

ところが、副腎皮質に副腎腺腫という良質の腫瘍やガンができたり、過形成といって副腎皮質が増殖すると、 アルドステロン が必要以上に分泌されます。これが 原発性アルドステロン症 で、低カリウム血症を示すことが多く、ナトリウムをため込む傾向になるため、体内の水分量がふえ、循環血液量もふえて高血圧になります。

レニンの分泌量が少なくなるのも特徴の1つです。副腎皮質に腺腫や過形成があるかどうかは、 CT検査 、 シンチグラフィー 、 超音波検査 などの画像診断をするとわかります。

シンチグラフィー は、アイソトープを静脈に入れたあとで、特殊なカメラで写真を撮る検査です。

副腎静脈へカテーテルを入れて血液をとり、血中の アルドステロン の量を測定することもあります。腺腫があれば、手術でとり除き、過形成の場合は抗アルドステロン薬を使います。

副腎皮質からのホルモン分泌過剰で起こる クツシンク症候群

副腎皮質から分泌される糖質コルナコイドというホルモンの過剰によって起こる病気が クッシング症候群 です。

糖質コルナコイドが過剰に分泌されるのは、副腎皮質ホルモンの分泌を促す ACTH ( 副腎皮質刺激ホルモン ) がたくさん分泌された結果できる皮質の過形成や、腺腫、ガンなどが原因です。

この病気になると、疲れやすくなり、肥満して、顔などは満月のよう ( ムーンフェイス ) にまるくなりますが、手足は筋肉が萎縮して細くなります。

血圧も高くなりますが、これは糖質コルナコイドにナトリウムをため込む作用があるためと、アンジオテンシンなどの昇圧物質が増加するためだろうと考えられています。

尿の中にある糖質コルナコイドの代謝物を調べたり、副腎静脈造影、血管造影などの検査をし、手術が可能な場合は手術によって腺腫やガンなどを切除します。

しかし、手術ができない場合は ACTH 分泌を抑制する作用のある薬や、糖質コルチコイドの分泌を抑制する薬、降圧薬を投与します。

降圧薬は、手術をしても血圧が下がらない場合にも必要です。降圧薬では、 カルシウム括抗薬 、 ACE ( アンジオテンシン変換酵素 ) 阻害薬などが使われます。

副腎髄質にできる腫瘍 褐色細胞腫

副腎髄質からは アドレナリン や ノルアドレナリン などの カテコールアミン が分泌されています。ここに腫瘍ができると、 カテコールアミン が過剰に分泌され、 動悸 、 冷や汗 、 高血圧 などが起こります。

これらの症状が持続して起こるタイプと、発作的に起こるタイプがあり、いずれも20 〜40オぐらいに多い病気です。

ときには交感神経系の組織にできた腫瘍のために起こることもあります。診断は、症状のほか、尿中の カテコールアミン や発作時の血中の カテコールアミン の測定 、 CT検査 、 超音波検査 、 血管造影 などを行ったうえで下します。手術をして腫瘍をとり除けば完治しますが、降圧薬の中の α遮断薬 と β遮断薬 を組み合わせて血圧をコントロールすることもあります。

腎血管性高血圧

腎血管性高血圧

腎血管性高血圧 は、大動脈から腎臓へとつながる腎動脈またはその分枝が部分的あるいは完全に閉塞した結果、レニン・アンジオテンシン系が冗進して引き起こされる高血圧です。

腎血管性高血圧 腎臓に血液を送る動脈が狭められるために起こる

腎血管性高血圧

腎血管性高血圧

腎血管性高血圧 は、腎臓に血液を送っている動脈に、狭窄といって、内腔の狭められるところができ、腎臓に血液が十分行かなくなるために起こる 高血圧 です。二次性高血圧の中では、 腎性高血圧 の次に多く起こります。

腎動脈に狭窄ができる主な原因は、動脈硬化症と線推筋性異形成ですが、そのそほかにも大動脈炎症候群、血栓症、塞給症などがあります。

特に老齢者の場合は、動脈硬化による狭窄が多くなっています。ただ、わが国では、欧米と異なり、大動脈炎症候群によるものが多いという特徴があります。

線維筋性異形成 とは、血管壁に膠原線維という細胞と細胞のつなぎ目になっでいる組織と、筋線維が増殖するために、血管の内腔が狭くなる病気です。

線維筋性異形成は 腎動脈 に起こりやすく、そのために 腎血管性高血圧 になるのです。若い女性に多い病気です。

動脈炎症候群とは、大動脈の分岐部から始まる動脈の炎症で、圧倒的に女性に多く起こります。炎症のある側の脈がふれなくなったり、ふれにくくなるので、脈なし病(別名:高安病)とも呼ばれています。

立ちくらみ、目の充血、視力低下、手足の冷えやしびれなどを伴うこともあります。炎症が腎動脈に及ぶと、 腎血管性高血圧 の原因になります。

なぜ 血圧が 上がるのかという点については、腎動脈に狭窄が起こり、腎臓への血流量が少なくなると、レニンの分泌がふえるからだと考えられています。

血管を拡張させる方法で治ることが多い

腹部に聴診器を当てると、狭くなった動脈内腔を通過する血流により生じる雑音が聴こえ、 静脈性腎孟造影 を行うと、造影剤を入れて2〜3分までは狭窄のある側の腎臓の影が狭窄のない側にくらべて映りにくく、また腎臓の大きさが小さいことなどにより診断されます。

レニンの測定と腎動脈造影も欠かせない検査です。特に腎動脈造影は、狭窄のある部分を特定できるので重要です。

治療でまず行われるのは、「経皮経管的血管形成術(PTA)」です。これは、先端にバルーンのついたカテーテルを股動脈や前腕動脈から入れて、狭窄のあるところでふくらませ、血管を拡張させる方法です。これは入院期間も短く、費用も少なくてすみます。腎動脈の狭窄が治ると、レニンの分泌も正常になり、血圧も下がります。

この方法で成功しなかったときは、血行再建術などの手術を行い、それでもだめな場合は降圧薬を用います。降圧薬では、ACE ( アンジオテンシン変換酵素 ) 阻害薬が有効なことが多く、これを単独で用いたり、 利尿薬 と併用します。この薬はアンジオテンシンⅠをアンジオテンシンⅡ にかえる酵素の働きを抑える薬です。

 

腎性高血圧

腎性高血圧

腎性高血圧 は、腎臓内へ入る血液量が不足することで、 レニン という酵素が余分に分泌され、血圧を上げる物質をつくるために高血圧が起こるものです。

原因で最も多いのは 腎炎による 腎性高血圧

二次性高血圧の中で最も多いのは 腎性高血圧 です。腎性高血圧はいくつかの病気が原因で起こりますが、この中で最も多いのが 腎炎( 糸球体腎炎  ) です。

腎性高血圧

腎性高血圧

腎臓は腹部の上のほうに左右一対ある、そら豆に似た形の臓器で、皮質、髄質、腎孟からなります。

腎動脈は腎臓に入ると枝分かれして細くなり、糸球体という小さな球になります。糸球体はボーマンのう嚢という袋に包まれ、血液が糸球体を通るとき血球とタンパク質以外のものはボーマン嚢の中へ濾過され、尿のもとができます。

糸球体はすべて皮質にあり、片側の腎臓だけで釣棚万個もあります。ポーマン嚢の端からは尿細管が出て髄質に入り、再び皮質に戻ってまた髄質へ向かい、さらに腎孟へと戻ります。糸球体でつくられた尿のもとは、この尿細管を通る間に大部分が再吸収され、残ったものが、体内でできた尿素、クレアチニン、尿酸などの代謝産物といっしょになり、尿となって排泄されます。

急性腎炎 は溶連菌感染のあとで起こりやすく、一種のアレルギー反応だと考えられています。子どもに多いのですが、20代ぐらいまでの青年や、老人にも見られます。

主な症状はむくみ、尿が少ないか出ない、タンパク尿、高血圧ですが、血圧は上がらないこともあります。

慢性腎炎は急性腎炎とは異なり、長期間タンパク尿がつづく病気です。慢性腎炎は最初、タンパク尿や血尿、尿沈査異常が見つかるぐらいで、むくみや高血圧にならないこともありますが、進行するに従って高血圧になります。

症状と尿検査の結果で診断されますが、正確な診断には腎生検が必要です。またクレアチニン・クリアランス検査などにより、腎機能を調べることも重要です。減塩食や利尿薬をはじめとする 降圧薬 を使って治療しますが、腎機能低下が進んで腎不全になると、 人工透析 が必要となります。

女性に覆い腎盂腎炎

腎孟腎炎は、大腸菌などの細菌感染による腎臓の炎症で、やはり腎機能の低下から高血圧になります。

症状は

  • 高熱
  • 腰痛
  • 尿が少ないか出ない
  • 尿のにごり
  • 排尿時の痛み

などで、尿沈査を調べると、白血球の増加とともに、大腸菌などの細菌が見つかります。

腎盂腎炎は 膀胱炎 から進むことが多く、男性より尿道の短い女性のかかりやすい病気です。

治療では、抗生物質の投与がまず行われますが、治療不十分な場合は慢性化することが多いので、症状が消えても医師の指示どおり薬を服用することが重要です。