高血圧の検査はこんな順番で行われる

高血圧の検査はこんな順番で行われる

高血圧の検査はこんな順番で行われる 高血圧の検査とはどういった段取りで行われるのでしょうか? どのようにして 高血圧 と診断されるのでしょうか?

高血圧の検査はこんな順番で行われる 大事な3つのポイント

高血圧が心配で痛院に行ったとき、病院ではどんな検査を行うのでしょうか。

高血圧の検査はこんな順番で行われる

高血圧の検査はこんな順番で行われる

まず、1番にあげられるのは、もちろん血圧値です。収縮期(最大)血圧180mmHG 以上、拡張期(最小)血圧115 mmHG 以上などの、かなり高い高血圧の場合は、ただちに精密検査をする必要があるからです。

もう1つは、原因は何か、ということです。高血圧のほとんどは 本態性高血圧 であるとはいっても、原因となる病気がないことを確かめない限り、 本態性高血圧 とはいえないからです。

3番目は、合併症(余病)があるかどうかということです。心臓や血管に合併症がある場合には、治療法も異なってきます。

以上の3つの大事なポイントを踏まえて、まず行われるのがス クリーニング検査 です。

スクリーニング検査 の中には、問診、診察(血圧測定、聴診、打診、触診、むくみの判定)、肥満の判定、尿検査(尿タンパクや尿沈査など)、血液検査(血算、血清生化学検査)、眼底検査、心電図検査、胸部Ⅹ 線検査があります。

スクリーニング とは「ふるい分け」との意味であり、高血圧ではないかと受診をしたすべての人に行われます。

これらの検査をしたうえで、ごく軽い 本態性高血圧 と診断が下されると、 割醤油 などを使った 減塩 などの食生活の制限や、喫煙、アルコール、運動など日常生活上の注意について、指導があります。

しかし、 本態性高血圧 でも、血圧がかなり高かったり、合併症が疑われるときは、どんな合併症なのか、合併症の重症度はどの程度なのかを知るために、さらにくわしい検査が必要になります。

また、何か痛気があるために 血圧 が高くなっているらしいと診断されたときも、それがどんな病気なのかを突き止めるために、くわしい検査が行われます。

問診 何才から血圧が高くなったか、血縁者に 高血圧 がいないかなど

最初に行われるのが、この間診です。問診では、まず、過去にかかった病気はないか(これを既往歴と呼ぶ)、現在何か病気にかかっていないか、診察前の血圧値はいくつだったのか、いつから血圧が高いとわかったのか、頭痛、動悸、めまい、しびれなどの自覚症状があるか、年齢は何オかなど(これらを現病歴と呼ぶ)が聞かれます。

問診で、いつから血圧が高いとわかったのかということと年齢が聞かれるのは、何歳ごろから血圧が高くなったのかということ(発症年齢)が、本態性高血圧なのか、それとも何か病気があって血圧の上がる二次性高血圧なのかを判断する、目安の1つになるからです。

本態性高血圧は、大半が30歳ごろから高くなり始め、50歳ごろに高血圧になるというパターンをとります。このことから、20代で高血圧になったり、あるいは50代ぐらいまでは何もなかったのに、60代、70代で高血圧になった場合には、二次性高血圧の可能性が高くなります。

頭痛 、 しびれ などの自覚症状の有無を調べるのは、症状自体の治療とともに、合併症があるかないかを知る手がかりともなります。特に しびれ や マヒ などの神経学的な所見の有無は重要です。

両親や兄弟姉妹など、血縁者に 高血圧 の人がいないか、 高血圧 の 合併症 を起こした人がいないかなど(このようなことを家族歴という)も尋ねられます。
血縁者に高血圧の人がいる場合は本態性高血圧の可能性が高くなりますし、本人だけが非常に高い場合は、二次性高血圧に注意を払わなければなりません。

診察 血圧測定、聴診、打診、触診、むくみの判定

血圧測定
正常値
  • 収縮期血圧 140 mmHG 以下
  • 拡張期血圧 90 mmHG 以下

朝日覚めた直後の最も安静な状態での血圧を 基礎血圧 といいますが、 基礎血圧 は入院しているときでないと測れません。私たちがふつう 血圧 といっているのは、「随時血圧」のことです。
血圧は、家庭で測るときと痛院で測るときではかなり値の違う人もいますが、治療方針を決める場合には、病院で測った値を基準にします。

食事や喫煙、運動の直後は 血圧 が上がるので、そのような状態での 血圧 の測定は避け、普通の状態で5分以上安静にし、すわって、上腕で測ります。2回以上測ってその平均をとるのが望ましいのですが、病院によっては1回の測定で判断するところもあります。

初めての診察では、左右の腕を測ることもあります。一般にきき手は高めに出るので、10 mmHG ぐらいまでの差は正常範囲内とします。しかし、20~30 mmHG 以上の差のあるときは、左右どちらが高い場合でも大動脈炎症候群による二次性高血圧の可能性があるので、そのための精密検査を行います。

問診のとき、血縁者にだれも高血圧の人がいず、20代ぐらいの若い人か、逆に60歳を過ぎてから高血圧になった人だということがわかったときは、上腕と下肢の血圧を測ることもあります。大動脈縮さく窄症といって、大動脈が途中で狭くなっている病気の場合、腕の血圧は高いのに脚の血圧は低くなります。このときも精密検査を行います。

聴診、打診、触診打診とは、手で胸の上をたたいて、心臓が大きくなっていないかどうかを調べる検査ですが、現在では レントゲン 撮影をすることが多いので、行わないこともあります。
聴診とは、聴診器を胸やおなかに当てて、雑音がないかどうかを調べる検査です。心臓に雑音のあるときは大動脈弁閉鎖不全症が、おなかに雑音のあるときは腎血管性高血圧が疑われます。
触診とは、腫瘍がないか、腎臓や肝臓がはれていないかなど、腹部にふれて調べる検査です。むくみの判定腎臓が悪いときには、血圧が高くなるだけでなく、むくみ(浮腫)の出ることもあります。腎臓での排泄機能が低下して、体の中の水分が多くなるためです。 むくみ は腎臓だけでなく、心臓や肝臓の悪い場合でも見られます。
むくみ があるかどうかは、普通はすねを押して、へこみぐあいで調べます。

肥満の場合は皮膚の下は脂肪なのて、押してもすぐ元に戻ります。それに対して、 むくみ の場合は皮膚の下が水分なので、肥満は高血圧を助長するだけでなく、高血圧の合併症も誘発するという点で重要なので、スクリーニング検査の中に肥満の判定も入っています。

一般的な判定法は、( 身長-100)× 0.9 プラスマイナスを理想体重として、これより±15% 以内に入っているかどうかを調べるという方法です。

この方法では、厳密にいえば骨が太いのか、筋肉が多いのか、脂肪が多いのかまではわかりませんが、簡便なので、身長と体重のバランスから肥満度を判定しているのです。

尿検査 大事なのは 尿タンパク と 尿沈査

尿たんぱく
正常値
  • 定性検査 陰性(-)

高血圧でタンパク尿(尿にタンパクが混入する)のあるときは、まず腎臓に腎炎などの障害があってその後血圧が高くなる場合と、高血圧が進んだ結果として腎臓の障害が出る場合があります。

いずれにしても、腎臓の障害があるかないかを知る手がかりとします。タンパク尿の定性検査では-± +、と判定しますが、異常は+ からで、±は異常とはしません。定量検査は、尿1 dl 中にタンパクが何呼出ているかを測る検査で、タンパクの量を正確に知ることができます。ただし、タンパク尿はかぜで熱が出たぐらいでも出るので、継続的に出ていない場合には問題となりません。

潜血反応
正常値
  • 陰性 -

尿に試薬をまぜて、その反応で血液がまじっているかどうかを調べる検査です。- ± + 2+ 3+ で判定します。まれな病気ですが、腎臓に多数の膿疱を満たした袋)ができる嚢胞腎という病気は、初期には高血圧と血尿だけのことが多く、その診断の手がかりとなります。

尿沈査
正常値
  • 正常値 赤血球・白血球とも1個/視野から2個/視野細菌 0個

尿を試験管にとり、遠心分離機にかけると、血球などの重い成分が下に沈みます。その沈んだものをスライドグラスにのせ、顕微鏡で視野を移動させながら調べます。

細菌の有無もこの方法で調べます。慢性の腎孟腎炎があると白血球が出たり、細菌が出たりしますが、長い間に高血圧にもなるので、その診断の手がかりになります。

細菌は尿の中に全くないのが原則ですが、尿をとるときにまじることもあるので、少し見つかる程度なら正常と判定されることもあります。

尿糖正常値 陰性 (-)

尿の中に糖が出ているかどうかを調べる検査で、- ± – + ++ で判定します。 糖尿病 のある人が高血圧になると重症になることがありますし、クッシング症候群という副腎皮質から分泌されるホルモンの病気では、高血圧とともに尿糖が出ます。

血算 血液中の赤血球、白血球、血小板、ヘモグロビンを調べる

赤血球
  • 男性 410~530 万
  • 女性 380~480 万
白血球
4000~8500 万個
血小板
15~49 万
ヘモグロビン
  • 男性 14~18 g/dl
  • 女性 12~16 g/dl

高血圧で行うスクリーニングの血液検査としては、血算と血清生化学検査があります。血算では、1 m㎡ 血中に赤血球、白血球、血小板の数がどれぐらいあるかということと、1 dl 中にヘモグロビンが何 g あるかを調べます。血算は、病気全般のスクリーニングとしての意味はありますが、高血圧のスクリーニングとしては、むしろ血清生化学検査のほうが重要です。

血清生化学検査 短時間で多くの成分の検査ができる

血液を試験官に入れて、遠心分離機にかけると、血餅という血の固まったものが下に沈んで、血清という黄色っぼい上澄み液ができます。これを自動分析機にかけると、短時間で20種ぐらいの成分値が出てきますが、ここでは高血圧のスクリーニングとして必要なものを紹介します。

電解質
電解質の検査は腎臓障害があるかどうかをみるために行いますが、この中で特に重要なのが、カリウムです。高血圧だけでなく、同時にカリウム値が低いときは原発性アルドステロン症(P 54参照)が、高いときは腎不全などのような腎機能の低下が疑われます。利尿薬を服用しているときも、カリウム値が低くなります。
血糖(BS BZ)
尿糖と同様、糖尿病があるかどうかを知る手がかりとしますが、食事をしたあとは血糖値が高くなるので、空腹時に検査しないと意味がありません。空腹時の血糖値が1 dl中140 mg 以上になると、糖尿病と診断されます。

眼底検査 高血圧の重症度を知るてがかかりに

眼底(網膜)は、高血圧になると出血などの障害が出やすいところで、また、人体の中で唯一、動脈を直接見ることのできるところです。

さまざまな検眼鏡を使って調べたり、眼底カメラで写真を撮ったりします。高血圧の場合、網膜の血管が収縮していたり、血管の交差しているところに異常が見えたりします。

ゼロ網膜の様子は、0を正常とし、第Ⅳ度までの五段階に分類されていますが、具体的には、次のようなことが検査のポイントになっています。

第Ⅰ度(軽症高血圧)
動脈の幅が普通より少し狭くなり、軽い動脈硬化が出ている。
第Ⅱ度(中等症高血圧)
動脈の幅はさらに狭くなり、動脈硬化が見られる。
第Ⅲ度(重症高血圧)
第Ⅱ度の血管の変化に加えて、出血、白斑(出血のあとや動脈の梗塞のため血液のとだえているところ)などが見られる。
第Ⅳ度(悪性高血圧)
第Ⅲ度の血管変化のほかに眼底の乳頭(視神経が脳へ出ていく出口)の境界が不鮮明となり、乳頭浮腫=種の水ぶくれ)の状態になっている。

ただし、眼底検査は手間がかかるうえに、暗い部屋でないと行えません。内科の開業医で暗室を備えたところは少ないので、実際には内科医ではあまり行われていず、必要な人にだけ、眼科医での眼底検査をすすめているところが多いようです。

心電図検査 波形の変化などで心肥大を判定

心臓からは電気信号が出ていて、それは心臓の真上にあたる皮膚にも伝わっています。

その信号を記録したのが心電図で、心電図の波形の変化をみると、心臓の異常の有無が、ある程度わかります。心電図検査は、皮膚の上に電極をつけて行いますが、10分ほどで終わり、ほとんどの内科医でできます。

心電図によって心肥大、電気信号を発生する際の異常、電気信号が伝わる際の異常を判定するのに使われています。

胸部X線検査 心拡大や心不全を判定

心電図とのセットで行うことが多い検査ですが、専門の部屋が必要なので、すべての内科医でできるとは限りません。

この検査では心臓が拡大しているかどうかを調べます。胸郭の幅に対する心臓の横径の比を「心胸(郭)比」といいますが、これが50% 以下なら正常です。

二次性高血圧 が疑われるときの検査とは

二次性高血圧とは、体質・遺伝・環境・加齢によって発症する本態高血圧とは異なり、ある特定の原因がある 高血圧 をいいます。 主に腎臓の働きに関連するものと血圧を上げるホルモンが異常になるものがあります。

ホルモンの検査

  • アルドステロン 正常値 5~20 ng/dl
  • レニン 正常値 0.5~2.0 ng/dl
  • コルチゾール 正常値 5 mg 以下/dl
  • アドレナリン 正常値 12 ng/1日排泄量
  • ノルアドレナリン 正常値 66 /1日排泄量ng
  • ドーパミン 正常値 242 ng以下/1日尿排泄量

原発性アルドステロン症が疑われるときは、血中のアルドステロンやレニンの量を調べます。この病気になると、アルドステロン値は高く、レニン値は低くなります。
また、レニンは腎血管性高血圧のときに高くなるので、その可能性があるときも調べます。クッシング症候群が疑われるとき、血中のコルチゾール(糖質コルチコイド一種で最も代表的なもの)を調べます。この値が高いとクッシング症候群の可能性が高くなります。褐色細胞腫(P5参照)が疑われるとき、尿中のカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン) を調べます。これらの値が高いと褐色細胞腫の可能性が高くなり、ます。

クレアチニン・クリアランス検査

  • 正常値110 ml ± 20 ml 分

腎臓の糸球体の濾過率が悪いと思われるときに調べる検査です。まず、500 ml ぐらいの水を飲んで1時間後に尿を出し、30分後に採血、1時間後に採尿をします。この検査では血中のクレアチニン濃度、尿中のクレアチニン濃度、尿の量で判定します。数値が低い場合に腎機能の低下があると判定されます。

CT検査、超音波検査(エコー)

CT はコンピュータとX 線を組み合わせた断層撮影装置のことで、臓器や組織を輪切りの状態で撮影します。

超普波検査(エコー)は、人体に聞こえない高い周波数の音波を使った検査で、Ⅹ線のような副作用もないといわれています。ともに、原発性アルドステロン症や褐色細胞腫などの腫瘍を見つけるのに有効です。

静脈性腎孟造影

静脈にヨード系の造影剤を注入してⅩ線撮影をすると、尿管や腎臓の形が浮き上がって見えます。

造影剤を入れてから、1分後、2分後、3分後というように何枚か撮影しますが、腎臓の血管に狭窄があると、流れが悪いので、3分後ぐらいまでだと、悪いほうの腎臓ははっきり映りません。

ところが、15分後ぐらいになると、正常な腎臓は造影剤を排泄してしまっているので映らないにもかかわらず、悪いほうの腎臓が今度ははっきりと映りのうほうじんます。腎血管性高血圧や嚢胞腎が疑われるときに行います。

血管造影

腎動脈にカテーテル(血管、臓器の検査や治療に優「プラスチック製の細長い管)を入れ、そこからヨード系の造影剤を入れてⅩ線撮影をする検査です。腎動脈の狭窄、原発性アルドステロン症などの腫瘍が疑われるときに行います。